抄録
チオレドキシン(Trx)は、細菌から高等動植物までほぼ全ての生物の細胞に普遍的に存在する蛋白質である。Trxは、システイン残基のチオール基を介して、ジチオール・ジスルフィド交換反応により標的蛋白質中のジスルフィド結合を還元することで標的タンパク質の活性を調節する。二次元電気泳動法とチオレドキシンアフィニティークロマトグラフィー法により、これまでに多くの標的タンパク質の候補が挙げられてきたが、生化学的な確認まで行われたタンパク質は、まだ少ない。シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC6803のカルビン・ベンソン回路のPhosphoglycerate kinase(PGK)も、このようなTrxの標的タンパク質候補である(Pérez-Pérez, M. E, et al. (2006) Proteomics. Suppl 1:S186-195)。私たちは、組換体PGKを調製し、Trxによって活性調節を受けること、分子内のジスルフィド結合がTrxによって酸化還元制御を受けることを明らかにした。また、システイン残基をアラニン残基に置換した組換体の結果から、この制御に関わるシステインについても考察した。さらに、この制御が生理的条件で行われるかどうかを、生細胞を用いて調べた。以上の結果から、PGKがTrxによって制御される新規のチオール酵素であることを報告する。