抄録
渦鞭毛藻はサンゴ共生藻や赤潮藻として海洋生態系で重要な地位を占める酸素発生型光合成生物である.渦鞭毛藻の葉緑体は褐藻や珪藻などと同様に紅藻に由来すると言われているが,その葉緑体ゲノムは独自の進化を遂げている(一遺伝子ずつを搭載するミニサークル構造や核移行の進行).我々はこれまでに,渦鞭毛藻の光化学系2複合体を構成するコアタンパク質の遺伝子(psbA, psbD)について詳細な解析を進め,ミニサークル構造や共存するバリアントの奇異な構造とその生成機構,転写産物においては多数のRNA編集部位の存在,などの実態を解明してきた.一方,塩基配列から推測された一次構造では,渦鞭毛藻に特異的な変異(アミノ酸置換や疎水度の変化)が見いだされ,その一部についてこれまで報告してきた.本発表では,他のサブユニットの配列解析の結果も含めて、渦鞭毛藻の光化学系2複合体の構造の特徴を検討した結果を報告する.