抄録
KODA (9,10-ketol-octadecadienoic acid)は、アオウキクサの花成に関するストレス誘導性の生理活性物質として単離され、アサガオ品種ムラサキ(Pharbitis nil cv. Violet)にも花成促進効果がある。カーネーション、トルコギキョウ、リンゴなどにおいても同様の効果が報告されているが、KODAの作用機構は明らかではない。その理解は、花成機構を研究する上でも、またKODAの実用を考える上でも重要である。アサガオの芽生えに弱い花成を誘導する1回の12時間暗期の前後に100 μMのKODAを散布することにより花芽形成数は増加した。この花芽数の増加は、着蕾した節が下がったことによるものであった。花成のマーカー遺伝子の発現をRT-PCRにより調べた結果、子葉におけるPnFT (FLOWERING LOCUS T)には変化が無かったが、頂芽におけるPnAP1(APETALA1)の発現上昇が約2時間早まり、PnTFL1b(TERMINAL FLOWER 1b)の発現低下も同様の傾向を示した。以上の結果から、KODAはPnFTの転写より後からPnAP1の転写までの間で、花成を促進することが明らかになった。