日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
会議情報

1.9 Å分解能の光化学系II構造から見た光合成酸素発生の分子基盤
*沈 建仁梅名 泰史川上 恵典神谷 信夫
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 0320

詳細
抄録
光化学系II複合体(PSII)の構造はこれまで3.8-2.9 Å分解能で報告されてきたが、これらの分解能は、酸素発生を触媒しているMn4Caクラスターの詳細な構造を解明するには不十分であった。我々は、PSII結晶の質を改善し、その構造を分解能1.9 Åで解析することに成功した。その結果、電子密度マップから4つのMn, 1つのCa原子の位置を確定し、それらの金属原子をつないでいる酸素原子を5つ同定した。得られたMn4CaO5クラスターの構造は、ゆがんだイスのような形を取っており、3つのMn, 1つのCa原子と、4つの酸素原子がゆがんだキュバン構造を作りイスの腰かけ部となり、1つのMnと1つの酸素原子がキュバンから離れてイスの背もたれ部を形成している。背もたれ部にあるMn原子と、Ca原子にそれぞれ2つの水分子が結合しており、その一部が水分解反応の基質となることが示唆された。我々はさらに4つのMn, 1つのCa原子のすべての配位子を決定し、そのうち、すべてのMn原子は6配位であり、Caは7配位であることを明らかにした。これらの結果は、PSIIにおける水分解・酸素発生反応の機構を解明するのに重要な構造的基盤を提供するものである。
著者関連情報
© 2011 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top