抄録
収量増産を考える上で耐倒伏性を向上させることは重要である。倒伏はその状態により稈が湾曲して倒れる「なびき型倒伏」、稈が折れて倒れる「挫折型倒伏」にわけられる。イネを含む多くの作物では半矮性遺伝子の導入により「なびき型倒伏」に対し抵抗を付与してきた。実際、sd1や短銀坊主のようなジベレリン(GA)欠損変異体が収量増産に貢献した。しかしGA欠乏が稈形質に与える影響はほとんど研究されていない。そこで本研究ではGA突然変異体を用いて、GAの稈形質に与える影響を調査した。倒伏抵抗性評価に関し「なびき型倒伏」はcLr法、「挫折型倒伏」は挫折荷重測定法を用いた。各変異体のcLr値はGA欠損矮性変異体は野生型に比べて大きい値を、GA過剰徒長変異体は小さい値を示した。一方挫折荷重測定値は、矮性変異体は野生型より小さく、徒長変異体は大きい値を示した。次に稈の物理的強度に関わる稈径を測定した。その結果、矮性変異体は野生型よりも稈が細く、徒長変異体は太くなった。これらの結果より、挫折荷重値が矮性変異体で野生型よりも小さい値を示したのは稈が細くなったためであると示唆された。以上の結果より、ジベレリン半矮性遺伝子による短稈化は「なびき型倒伏」に対する抵抗性を向上させる一方、「挫折型倒伏」抵抗性は低下させると考えられた。本研究は農林水産省・新農業展開ゲノムプロジェクト(IPG-0003)の助成を受けて行われた。