抄録
植物ペルオキシソームは植物ホルモンの生合成や光呼吸に関与し、植物独自の機能を進化の上で獲得してきた。興味深いことに、外的環境の変化や組織の違いによって可逆的にペルオキシソームの機能転換が起こることが知られており、このようなペルオキシソームの柔軟性が植物の高次機能獲得の鍵となっている。ペルオキシソームは独自のゲノムを持たないため、機能、形態維持に必要な遺伝情報は全て核にコードされている。そのため、ペルオキシソームの柔軟な機能転換において、サイトゾルからペルオキシソームへの新生タンパク質の輸送は厳密に制御されている。我々は、ペルオキシソームの形態形成の分子機構を明らかにするために、ペルオキシソーム可視化形質転換体を親株としたスクリーニングを行い、種々のaberrant peroxisome morphology (apm)変異体を単離してきた。このうちのひとつ、apm10変異体ではタンパク質の輸送効率が著しく低下しており、APM10がペルオキシソームにおける輸送機構の構成因子であると期待された。遺伝子同定の結果、APM10はペルオキシソーム輸送シグナルをもつLONプロテアーゼであることが明らかとなった。今回の報告では、タンパク質輸送機構においてLONプロテアーゼが担う役割を考察したい。