日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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HS3は葉緑体ゲノムの転写制御により種子の貯蔵脂質合成に関与する
*金井 雅武林 誠西村 幹夫
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p. 0364

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抄録
種子の脂質合成を制御する機構の解明は植物科学における重要な課題の1つである。植物では葉緑体で合成された脂肪酸を用いて、ER内でトリアシルグリセロールを合成し、オイルボディに蓄積される。このように脂質合成は3つのオルガネラが関与しており、種子中の脂質合成を制御する機構は未解明な部分が数多く残されている。我々は典型的な脂肪性種子植物であるシロイヌナズナを用いて、種子中の脂質含量が変化している変異体を種子の密度を指標に選抜した。種子密度が高くなっている変異体種子の中から、野生株よりも脂質蓄積量が低下している変異体としてHS3Heavy Seed3)が選抜された。HS3はDEADボックスDNA/RNAヘリカーゼをコードし、葉緑体に局在した。HS3は発芽後の初期生長及び、種子形成前期に強い発現を示し、hs3欠損変異体は発芽後の初期生長及び、種子形成前期において特異的な葉緑体の発達不全を示した。定量PCR解析の結果からhs3変異体では発芽後の初期生長及び、種子形成前期において特異的に葉緑体ゲノムにコードされている遺伝子の発現が低く抑えられており、それらの遺伝子の中には脂肪酸合成酵素であるACCaseのサブユニットであるACCDが含まれていた。以上の結果からHS3は葉緑体内において葉緑体ゲノムの遺伝子発現に関与するタンパク質であり、初期生長及び種子の脂質貯蔵合成に関与していることが示された。
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© 2011 日本植物生理学会
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