抄録
アクアポリンは水や多様な小分子を輸送する膜タンパク質である。これまでに、水ストレスに関連した様々な環境ストレスに応答し、発現や局在を変化させることが報告されているが、高温ストレスに関する報告はない。本研究では、外界の温度変化を受けやすく、水ホメオスタシスに重要な役割を果たしていると考えられる細胞膜型のPIPに注目し、アクアポリンの高温応答性について検証した。
シロイヌナズナにある13種のPIP遺伝子のうち、PIP2;3のみが高温ストレスによる発現誘導性を示すことを見出した。この発現上昇は一過的で、植物を36℃の高温条件に置いてから2時間以内にはPIP2;3の発現がピークに達し、そのまま高温状態が維持されても数時間後には元の発現レベルに戻った。これらの結果から、この現象は高温に対する初期のストレス応答であることが示唆される。また、PIP2sのタンパク質量もmRNA量の変化と同様に高温で増大し、次第に減少した。このことから、高温によるPIP2;3の高温誘導は、転写レベルだけでなく、アクアポリン量にも反映されると考えられる。プロモーターGUS解析の結果、高温処理後のPIP2;3は主に胚軸や本葉の葉脈および若い組織で強い発現上昇がみられた。さらに、PIP2;3破壊株を用いた実験も併せて報告し、PIP2;3の高温応答性についての生理学的意義について考察する。