抄録
cAMPは、様々な細胞内プロセスを制御することが知られる信号伝達のセカンドメッセンジャーの一つで、ATP を基質としてアデニル酸シクラーゼ(AC)によって生成される。定量法の確立によって、動植物の細胞で多量に存在することがわかってきたが、高等陸上植物における生理作用についてはこれまであまり研究されていなかった。そこで、本研究では、シロイヌナズナにおいて、アミノ末端に核酸結合ドメインを有し、トウモロコシのAC である PsiP と相同性を示すAt3g14460 (AC1) および At3g14470 (AC2)の2つの遺伝子に注目し、その機能解析を行った。これらの遺伝子は、シロイヌナズナの生活環におけるほとんどの過程において主要な組織で発現し、特に花芽組織で高い発現が観察されることから、これらの組織でなんらかの機能を持つと考えられた。さらに、AC1とAC2は、cAMP合成能を欠くE.coliAC変異株(cya)の表現型を相補した。そこで、これらの遺伝子を過発現する植物体および、T-DNA挿入変異株を用いてさらに解析を進めたところ、これらの遺伝子が、発芽種子の塩耐性に関わることを示唆する結果を得たのでこれを報告する。