抄録
近年、赤/遠赤色光変換型フィトクロムと似て非なる新規光受容体群シアノバクテリオクロムが見出され、多様な光質に応答する光受容体が同定されている。中でも、AnPixJのGAFドメイン(AnPixJ-GAF)はフィコシアノビリン(PCB)を共有結合し、緑色光吸収Pg型と赤色光吸収Pr型の間を可逆的に光変換する。AnPixJ-GAFのPr型はフィトクロムのPr型同様、色素構造はZZZであり、赤色光照射により、CD環の間の二重結合が回転しZZE構造となるが、最終的にはフィトクロムとは異なった短波長吸収Pg型に光変換する。これまでは、シアノバクテリア、または、PCB産生大腸菌から精製したホロAnPixJ-GAFを解析してきたが、本研究では、AnPixJ-GAFをアポタンパク質として大腸菌から精製し、PCBとin vitro再構成することで、AnPixJ-GAFの色素結合過程を詳細に解析した。アポAnPixJ-GAFはPCBと混合後すぐに共有結合し、その結合は1分以内で完了した。暗条件で再構成したホロAnPixJ-GAFはPr型であり、Pg型との間の可逆的光変換を示した。混合直後の吸収スペクトルにおいて、Pr型のピーク波長よりも長波長(680 nm)に吸収の肩が検出され、Pr型の生成過程において中間体の存在が示唆された。この中間体も合わせて、AnPixJ-GAFの色素結合反応スキームを議論する。