抄録
光屈性におけるオーキシン輸送体PINの働きについて調べるために、オーキシンの横輸送に関与すると考えられているPIN3と、その近縁分子種であるPIN7に注目し解析を行った。暗所で育てたシロイヌナズナの芽ばえを材料にして、パルス誘導型の光屈性について解析すると、野生型では典型的なベル型の曲線が得られた。pin3、pin7、pin3 pin7突然変異体でもベル型の曲線が得られ、光量依存性は野生型と同様だったが、最適条件下ではそれぞれ50%、20%、70%程度反応が弱まっていた。一方、青色光の照射時間に依存する光屈性(時間依存型光屈性)について調べると、野生型では照射時間を3分以上長くすると時間依存型光屈性が現れることが分かった。pin3、pin7、pin3 pin7変異体でも3分以上の照射により時間依存型の光屈性は誘導されるが、反応は部分的に弱まっていた。これらの結果から、少なくともPIN3とPIN7はパルス誘導型光屈性および時間依存型光屈性の両方に関与し、それらがオーキシンの不均等分配に働いていると考えられる。ところが、芽ばえに30分以上青色光を連続的に照射すると、pin3 pin7変異体でも野生型と同様な光屈性を示した。この結果は、連続照射によって誘導される光屈性の場合、PIN3、PIN7以外の因子がオーキシンの不均等分配に関与していることを示唆している。