日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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イネのプロトカテク酸放出トランスポーター
*石丸 泰寛筧 雄介佐藤 豊佐藤 祐樹魚住 信之中西 啓仁西澤 直子
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p. 0431

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抄録
イネ科以外の植物は,根圏にプロトンを放出してpHを下げ,フェノール類を分泌して3価鉄を可溶化し,それを還元して2価鉄を吸収する。一方,イネ科植物は,「3価鉄‐ムギネ酸類」として鉄を吸収する。これらの吸収機構に関わる分子の多くが同定されているが,フェノール類を分泌するトランスポーターは明らかになっていない。本研究では,イネからのフェノール類の一種であるプロトカテク酸(PCA)放出トランスポーターを同定すると共に,イネもフェノール類の分泌により鉄を可溶化していることを明らかにした。PCAの放出トランスポーターの単離は,これが初めての報告である。
我々は,カドミウムを蓄積する変異体のスクリーニングの結果,PCAの放出に関わるpez1PCA efflux zero 1)の欠損イネを得た。導管液と根分泌物をLC/MSを用いて解析したところ,野生型に見られるPCAのピークがpez1欠損株では検出できなかった。イネにおいてPEZ1-GFPは細胞膜に局在し,PEZ1はPCAの輸送活性を示した。また,PEZ1は中心柱に発現していた。
PCAは3価鉄を可溶すること,還元作用を持つことが報告されている。pez1欠損株の鉄含量を測定したところ,鉄が根に蓄積し,導管液中の鉄含量が減少していた。PCAを放出できないpez1欠損株では,根のアポプラズムに沈着した鉄を十分に可溶化できないことを示している。
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© 2011 日本植物生理学会
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