抄録
UVBによって誘発されるDNA損傷であるシクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)を修復するCPD光回復酵素は、イネにおいてその酵素活性の高低がUVB抵抗性を決定する。植物細胞の核、葉緑体、ミトコンドリアは独自のDNAを有しており、各DNAにはUVBによりCPDが誘発される。我々は、イネにおいてCPD光回復酵素がDNAを有する全てのオルガネラに移行して機能していることを示してきた。しかし、その移行メカニズムの実態は不明である。本研究では、各オルガネラへの移行に関与する配列を同定するために、CPD光回復酵素の部分配列とGFPとの融合タンパク質を用いた発現解析を行った。イネCPD光回復酵素(全長506アミノ酸)のC末端領域385-506番目のアミノ酸配列とGFPの融合タンパク質においては、核とミトコンドリアへのGFPの局在が観察された。より範囲を限定した解析を行ったところ、(1)391-401番目のアミノ酸配列とGFPの融合タンパク質においてはミトコンドリア移行への関与が、(2)487-489番目の3アミノ酸の核移行への関与が示唆された。一方、葉緑体に関しては、CPD光回復酵素の全長とGFPとの融合タンパク質を、イネ幼植物体に導入することにより観察可能であることを見出した。現在、より詳細な移行シグナルの解析を行っている。