抄録
カドミウム感受性酵母へイネ品種日本晴の幼植物体から調製したcDNAライブラリーを導入する方法で,イネ由来のカドミウム耐性遺伝子の網羅的探索を行った.これまでに,3x105クローンから5個の耐性クローンを得ている.併行して行ったハクサンハタザオcDNAの同様の探索から,多く得られたファイトケラチン合成酵素遺伝子は得られず,植物種毎にカドミウム耐性クローンのプロファイルが大きく異なることが明らかとなった.上述の5クローンの中には,先に演者らがメヒシバから単離したDcCDT1の相同遺伝子であるOsCDT1,そしてOsCdR1が存在した.OsCDT1は55アミノ酸からなりシステインに富むペプチドをコードしていた.OsCdR1を導入した酵母は,カドミウムの他に銅に対しても耐性となったが,Co2+,Ni2+,Zn2+,Mn2+に対する感受性は変わらなかった.現在,OsCdR1を過剰発現したイネおよびシロイヌナズナの形質転換体を作出して,植物における本クローンの役割を評価しようとしている.