抄録
イネの重要害虫であるツマグロヨコバイ (GRH) は九州~本州,中国やアジアの山間地帯の稲作地域で発生し,吸汁加害に加え,ファイトプラズマ,イネ萎縮病・わい化病の原因となるウィルスを伝搬する.植物と病原菌における相互作用の解析から,植物は微生物由来分子パターン (MAMPs) やエフェクターを認識し,防御応答を発揮することが分かってきた.しかし,植物と害虫との相互作用に関する知見はまだ少ない.本研究では,GRHのPAMPs (pest-associated molecular patterns) やエフェクターを探索することを目的とした.まず,GRH総タンパク質ライブラリー,およびこれらをスクリーニングするためのレポーターイネを作成した.GRH cDNAライブラリーをファージミドにmass excisionし,このクローンを100個ずつプールした後,in vitro転写/翻訳システムによりタンパク質の合成を行った.多数のタンパク質が発現していることを35S-メチオニンでラベルすることにより確認した.レポーターイネ作出のため,GRH吸汁により誘導される遺伝子を,マイクロアレイによりスクリーニングした.吸汁に応答するプロモーターZIMproを単離し,GUSを連結した遺伝子をイネに導入した.現在これらを用いて,スクリーニングを行っている.