抄録
活性酸素や一酸化窒素は、植物免疫応答や様々なストレス応答に関与して生成されるラジカル分子であり、その生成が急激な応答であるためラジカルバーストと呼ばれている。これまで、MAPKカスケードがラジカルバースト制御において重要な役割を果たすことを明らかにしてきた。一方、ラジカルバーストに関わる因子として、葉緑体に局在するタンパク質CASを見いだしてきた。シロイヌナズナのCASノックアウト変異体 (cas-1) は、非親和性細菌Pseudomonas syringae DC3000(avrRpt2)接種による過敏感細胞死の遅延やラジカル生成量の減少を示す。さらにCASは、flg22が誘導する気孔閉鎖、サリチル酸合成、カロース蓄積などの免疫応答に関与することが明らかとなった。このことから、葉緑体は、ラジカルバーストをはじめ植物免疫における様々な応答において重要な役割を果たすと考えられた。今回、免疫応答における葉緑体機能変化を捉えるため、葉緑体タンパク質におけるプロテオーム解析を行った。シロイヌナズナ葉をflg22で処理すると、2時間後で多くのタンパク質の増減が確認された。さらに、flg22による免疫応答を著しく欠損するcas-1は、これらの変動が遅延した。本発表では、プロテオーム解析によって明らかとなった免疫応答時の葉緑体機能制御について得られた知見を紹介する。