日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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異なる変動光環境に順化した植物の光変動への応答の違い
*河野 優寺島 一郎
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p. 0455

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抄録
樹林の下層部(林床)の光環境は、太陽光が樹木の影響を強く受けた低強度の間接光と、影響の少ない高強度の直達光から成る。直達光による光強度の上昇・下降は非常に速く、強光状態は数秒から数分間続く。林床には、しばしば、直達光が短時間に集中して、断続的に差し込む。林床植物は、光変動によるエネルギー流入の激しい変動に対応して生存しなくてはならない。林床植物のクワズイモ(Alocasia odora)を、林床(変動光)と蛍光灯下(連続光)で栽培し、それらの葉に、一定時間の強光/弱光を交互照射した。光化学系II由来のクロロフィル蛍光を測定した結果、連続光個体の電子伝達速度(ETR)は強光に対する定常値が強光/弱光の周期を重ねる毎に低下したのに対し、変動光個体は素早く応答し、強光時のETRは一定値を保った。変動光と同強度の強光を連続照射した場合、両個体のETRとも光阻害を受けなかった。この結果は、連続光個体では光合成が光変動によって抑制されることを示唆している。一方、変動光個体の光変動に対する素早い応答は、葉緑体チラコイド膜のオルタナティブな電子伝達経路の関与を示唆していた。光変動による光合成の抑制と、光変動に対する素早い応答をもたらすメカニズムの解明を目指し、クワズイモに加えてシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の変異体を使った実験を進めている。
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© 2011 日本植物生理学会
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