日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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異なる波長の光により生じる葉内の光阻害勾配について
*小口 理一Douwstra Peter藤田 貴志Chow Wah Soon寺島 一郎
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p. 0454

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抄録
光阻害の原因がクロロフィルによる吸光だとするエクセス説と、マンガンによる吸光だとするマンガン説との間の論争に決着を見いだすべく、異なる色の光により葉内にどのような光阻害の勾配ができるかを調べた。
リンコマイシン処理によりD1タンパク質の修復を阻害したリーフディスクを、白、青、緑、赤の光で光阻害処理した。光ファイバーを用いたクロロフィル蛍光測定装置とマニュピレーターを組み合わせ、先端を細くした光ファイバーを葉内に差し込んで行く事で、葉内の各深さでのクロロフィル蛍光の測定が可能となった。また、光阻害の勾配の結果を従来のクロロフィル蛍光測定装置の結果と比較した。
葉の表面付近では青、赤、緑の順で光阻害が強く起こっていたが、葉の内部では青、緑、赤の順に変わっていた。それぞれクロロフィルの吸光波長スペクトルおよびマンガンの吸光波長スペクトルと一致するため、二つのメカニズムの両方が関与していないと説明できない結果であった。これは我々の先行研究Oguchi et al. 2009 PCPを支持する結果である。
また、光阻害された葉のFv/Fmについて、従来のクロロフィル蛍光測定装置で赤色の測定光を使用しているものはこれを過大評価しており、青色の測定光を使用しているものは過小評価している事が明らかになった。それぞれ、光阻害の勾配がある葉の深い部分と浅い部分を測定しているためであると考えられる。
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© 2011 日本植物生理学会
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