抄録
植物は光合成により炭素を固定しているが、固定した炭素の約半分を呼吸によって放出している。陸上植物の呼吸量は、化石燃料や森林破壊による人為的な炭素放出量の6倍にも上ると言われている (Amthor 1995, Canadell et al. 2007)。高CO2条件下では、多くの植物種において葉面積あたりの光合成速度が増加することが報告されている (Long et al. 2004)。一方、高CO2条件での呼吸速度については明確な傾向や変化の要因についてはまだ不明な点が多い (Wang & Curtis 2002)。一般に植物の呼吸速度は、基質量とATP消費速度に律速されている。高CO2条件において呼吸速度が変化する場合、基質量あるいはATP消費速度の変化によるものであると予想される。
そこで本研究では、高CO2条件での呼吸速度の日周変化とそのときの律速要因を明らかにすることを目的とした。390 ppmvおよび780 ppmvのCO2濃度下でシロイヌナズナを栽培し、20日目の植物体を用いて、夜明け前と日没前の呼吸速度の律速要因を調べた。栽培CO2濃度による呼吸速度の応答性の違いが見られた。さらに、その変化の要因を明らかにするために、夜明け前、日中、日没前の一次代謝産物をCE-MSにより定量を行い、呼吸速度との関連について考察する予定である。