抄録
暗順応させたイネの葉にPPFD = 1,500 μmol m-2 s-1 の強光を5分間照射した際に誘導されるNPQの大きさについて調べた。ジャポニカ品種ササニシキのNPQは2.0程度でありインディカ品種ハバタキの1.5程度と比較して有意に大きい。World Rice Core Collectionの50品種ほどについてもNPQを測定した結果、2品種の例外を除いてジャポニカ品種のNPQは1.65よりも大きくインディカ品種のNPQは1.65より小さかった。ハバタキ-ササニシキのbackcross inbred lineを用いてQTL解析を行ったところ、NPQサイズを制御する遺伝子座qNPQ1-1とqNPQ1-2が第一染色体に同定された。このうちqNPQ1-2はadditive effectが大きくササニシキのアリルがNPQを正に制御する。qNPQ1-2領域にはイネの二つのPsbS相同遺伝子のうちの一つPsbS1が座上しておりササニシキとハバタキのNPQサイズの違いにPsbSが関与している可能性がある。PsbS1の過剰発現体を作成しPsbS1の発現量とNPQサイズの相関を調べたところ、PsbS1の発現量が高まるに従ってNPQが大きくなった。PsbS1遺伝子領域のDNA塩基配列を比較したところ、ジャポニカ品種と比べてインディカ品種ではPsbS1遺伝子プロモーターに欠失があった。