抄録
光化学系II(PSII)は、光合成反応において水を分解し、分子状酸素を発生する役割を持つ膜タンパク質である。この酸素発生に伴って生じる電子は、活性チロシン(Yz)、活性中心クロロフィルダイマー(P680)、クロロフィル、フェオフィチン、プラストキノン(PQ)の順にPSIIの内部を移動し、電子伝達の終端となるQBサイトに結合したPQをプラストキノールに還元する。その後、このプラストキノールはPSIIから離れ、脂質2重膜を経てシトクロムb6fに電子を供給する。
我々は、QBサイトに強固に結合してPSIIから電子を受ける電子受容部、剛直な共役鎖からなる電子移動部、その先端に位置して還元反応を実現する触媒部の3つを連結した分子を合成し、PSIIを利用した人工光合成を実現させたいと考えている。本研究では、その第1段階として、除草剤として知られる様々な分子をQBサイトへ結合させ、それぞれの結合様式を確認することで、上記の電子受容部をデザインし合成するための基礎情報を得ることを目標としている。
用いた除草剤は、QBサイトにPQと競争的に結合し、PSIIの酸素発生活性を阻害することが知られている。今回、PSII結晶にこれらの阻害剤をソーキングすることで複合体結晶を得た。それらの2.3-1.9Å分解能データから、QBサイトにおける各阻害剤の結合様式を結晶構造から明らかにした。