抄録
植物特有のホメオドメイン型転写因子をコードする WUSCHEL-related HOMEOBOX (WOX) 遺伝子群は、植物の成長と発生において重要な役割を担っている。遺伝学的な解析から、WOX 遺伝子の機能が徐々に明らかにされつつあるが、その細胞レベルでの働きを制御する分子機構はまだ明らかになっていない点が多い。
これまでに私たちは WOX4 遺伝子が維管束の前形成層細胞群で強く発現し、その細胞増殖の促進に関与していることを見出している。そこで今回、WOX4 遺伝子の転写調節制御について解析を行った。WOX4 は、WUSCHEL (WUS) と同様、その C 末端付近に TLXLFP 配列を含む WUS box を持つことから、主として転写抑制因子として働くと考えられる (Leibfried et al., 2005; Ikeda et al., 2009)。そこで、転写活性化型に改変した WOX4 遺伝子 (Ikeda et al., 2009) を発現誘導するコンストラクトを作成し、これをシロイヌナズナ培養細胞に形質転換した。確立した培養細胞では、エストロゲン誘導後約6時間で十分な遺伝子発現の誘導が見られた。現在、この培養細胞株を用いた遺伝子発現解析を行っており、その結果を報告する。また、WOX4 の DNA 結合能についても合わせて報告する予定である。