抄録
シロイヌナズナの側根形成は木部に接した内鞘細胞の不等分裂によって開始される.この過程はSLR/IAA14とARF7, ARF19を介したオーキシン応答性遺伝子発現によって制御されており,その下流ではLBD (Lateral Organ Boundaries-domain)/ASL (Asymmetric Leaves2-like)ファミリーに属するLBD16/ASL18の発現誘導が重要である.しかし,LBD16を含むオーキシン誘導性LBD/ASLメンバー(LBD16, 17, 18, 29, 33)が側根形成のどの過程を制御するのかは明らかになっていない.LBD16ゲノム制御下でLBD16-GFPを発現させたところ,LBD16は核に局在し,側根形成開始前から特定の内鞘細胞で発現した.同様にして転写抑制ドメインを融合させたLBD16を発現させたところ,側根形成開始が特異的に阻害され、内鞘細胞の分裂は観察されなかった.これらのことから,LBD16を含む上記のLBD/ASLメンバーは,転写制御を介して内鞘細胞の分裂開始に関与していることが示唆された.また,この植物では側根形成開始が阻害されたにもかかわらず,オーキシン応答を示す内鞘細胞が多数観察された.この結果はLBD16を含むLBD/ASLメンバーの機能抑制が側根形成の開始頻度にも影響することを示している.