抄録
パルプ生産に適した植林木Eucalyptus globulusは、挿し木による増殖が困難な樹種であり、改善が必要であった。発根能の異なるE.globulusについて、植物ホルモンの一斉分析の結果、発根率5%程度の難発根系統では発根率90%以上の易発根系統と比べて3倍程度インドール酢酸(IAA)量が低く、IAAのアミノ酸複合体であるIA-Aspについても顕著に少なかった。
そこで、様々な植物ホルモンの生合成および代謝に関与しているチトクロームP450に着目し、これらの働きを阻害することが期待されるトリアゾール誘導体の中から、発根を促進する化合物のスクリーニングを実施した。スクリーニングでは、材料として難発根系統を用いて、260種類のトリアゾール誘導体を発根培地に添加し、発根促進の有無によって選抜した。その結果、5種類の化合物を選抜することができた。選抜した化合物の一つであるMA65について、シロイヌナズナへ処理したところ、発芽後の根の増加が確認された。また、MA65培地で生育させたシロイヌナズナの内生IAA量を測定したところ、2倍以上多かった。さらに、胚軸部分を切り取り、MA65を含む培地で培養すると無添加と比べ、多数の不定根が観察された。以上から、今回選抜したMA65の発根促進作用は、植物の内生オーキシン量の作用による可能性が示唆された。