抄録
我々は、インドール-3-酢酸 (IAA)の生合成阻害剤としてL-アミノオキシフェニルプロピオン酸 (AOPP)を同定した。しかしAOPPはMS培地中で分解されやすく、phenylalanine ammonia-lyase (PAL)にも作用するなど特異性が低い。そこで、本研究ではAOPPをリード化合物としてより優れたオーキシン生合成阻害剤の開発を試みた。AOPPから構造展開して様々な化合物を合成し、その作用を調べた。その中でKOK1169と名付けた化合物は、IAA生合成酵素TRYPTOPHAN AMINOTRANSFERASE of ARABIDOPSIS 1のリコンビナントタンパク質の酵素活性をAOPPよりも強く阻害した。その一方、AtPAL2リコンビナントタンパク質の酵素活性に対する阻害作用は低下していた。また、シロイヌナズナにおいて、処理後3時間における内生IAA量の減少はKOK1169とAOPPで同程度だったが、30 μMで8日間処理するとAOPPでは形態変化が見られなかったが、KOK1169では生長抑制が見られた。この8日間処理でKOK1169と同時にIAAを投与すると、形態がコントロール区と同程度に回復した。以上の結果から、KOK1169はAOPPより特異的なIAA生合成阻害剤であることがわかった。本研究は、生研センターイノベーション創出事業の一環として行われた。