日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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シロイヌナズナ切断花茎の癒合過程における組織特異的な遺伝子発現と植物ホルモンシグナリング
*朝比奈 雅志東 克也Pitaksaringkarn Weerasak清水 美甫山崎 貴司光田展隆 展隆高木 優山口 信次郎神谷 勇治南原 英司岡田 清孝鎌田 博佐藤 忍
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p. 0505

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抄録
我々の以前の研究から、水平方向に直径の約半分まで切断されたシロイヌナズナの花茎では、主として髄組織の細胞が切断3日後から細胞分裂を開始し、約7日間で癒合すること、この癒合過程には、オーキシンの極性輸送が必須であることが示唆された。また、遺伝子発現解析から、それぞれERF/AP2型転写因子ファミリーおよびNAC型転写因子ファミリーに属する転写制御因子の一種が、切断1~3日後にわたって癒合部特異的な発現を示すこと、AP2型転写因子はオーキシンによって負に、NAC型転写因子は正に制御されていることが明らかとなった。本研究では、これら遺伝子の時空間的発現パターンについて調査した。まず切断部周辺組織の遺伝子発現を比較したところ、NAC型転写因子はオーキシンが蓄積する切断面の上側で、AP2型転写因子はオーキシン量が減少すると予想される切断面の下側で、特異的に発現が上昇する事が示された。CRES-T法を用いてこれら転写因子の機能を抑制した形質転換体では、癒合部における細胞分裂の阻害が見られた。また、細胞壁遺伝子や情報伝達因子についても、切断面の上下で異なった発現パターンを示すことが明らかとなった。以上の結果から、シロイヌナズナ切断花茎の組織癒合過程では、花茎切断によって生じた植物ホルモンのシグナリングが、切断部での組織特異的な遺伝子発現を制御している可能性が考えられた。
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© 2011 日本植物生理学会
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