抄録
トウモロコシ幼葉鞘先端2 mm 以内でTrp を前駆体としてIAA が合成されることが示されてきたが、幼葉鞘におけるIAA の合成経路はわかっていない。IAA 合成経路を明らかにするためには、より詳細なIAA 合成部位(細胞)を特定し、その組織(細胞群)を用いてさらなる解析を行う必要がある。そこで、本研究ではIAA 抗体染色法を用いてトウモロコシ幼葉鞘先端におけるIAA 合成細胞の特定を行った。幼葉鞘先端はIAA を合成しているため、IAA 輸送阻害剤であるNPA を処理するとIAA 合成部位においてIAA が蓄積する。この時、IAA 抗体染色のシグナルは先端0.5-1 mm の表皮細胞で強くなることがわかり、また、5-Methyl Trp を処理すると幼葉鞘先端のIAA 合成は阻害され、表皮細胞のIAA シグナルは消失した。これらより、幼葉鞘先端0.5-1 mm 以内の表皮細胞においてIAA が盛んに合成されていることが考えられる。この表皮細胞におけるIAA 細胞内局在を免疫電顕法により観察したところ、IAA の金粒子シグナルは主にプラスチド、ミトコンドリアを含む細胞質に見られ、これらの細胞内小器官がIAA 合成の場である可能性が示唆された。また、マイクロアレイ解析により、YUCCA 遺伝子が3 つ先端特異的に発現していることがわかったのでこの結果についても併せて報告する。