抄録
高等植物においてバクテリア型葉緑体RNAポリメラーゼのシグマ因子(SIG)は核にコードされ、プラスチドの発生や分化の制御に重要な働きをしている。シロイヌナズナやイネには6タイプのシグマ因子が存在し、中でもSIG5は、青色光や高塩濃度、強光などのストレスへの応答性を示す。我々は、これまでにダイズにおける2つのSIG5遺伝子(GmSIG5A,B)を同定し、発現解析を行い、GmSIG5Bが塩ストレス及び光へ応答することを明らかにした。
今回、我々はSIG5の系統的・機能的特異性に着目し、さらに他の植物におけるSIG5遺伝子ホモログの探索を行った。まず、既知のイネ、シロイヌナズナ、ダイズのSIG5遺伝子のアミノ酸配列の保存領域に基づいたディジェネレートプライマーによるPCRを行った。その結果ミニトマト、クローバー及びサクラにおいてSIG5に相当する遺伝子にホモロガスな配列を得た。この増幅領域の配列をもとにデータベースサーチを行ったところ、ポプラやカナダトウヒなどの多くの種にSIG5遺伝子が存在することが分かった。そこでSIG5遺伝子の系統的意義について確かめるため、さらにいくつかの裸子植物においてもSIG5遺伝子の探索を行った。これらの結果から、SIG5遺伝子は、ストレス応答に関与しているシグマ因子として陸上植物全般に普遍的に存在することが示唆された。