抄録
NIP5;1 は低ホウ素条件でのホウ素の効率的な輸送に必須なチャネルをコードしており、その転写産物の蓄積はホウ素欠乏で高まる。この応答機構の解明のため、NIP5;1 プロモーター領域と5’非翻訳領域(5'UTR)のホウ素欠乏応答における役割について調べたところ、5'UTRの+182-+200の配列がNIP5;1 転写産物のホウ素栄養に応じた蓄積に重要であることを前年会で報告した。
本年会では、NIP5;1 のホウ素欠乏応答の制御機構に関してさらに検討を加えた。ホウ素欠乏・十分条件におけるNIP5;1 mRNAの安定性について、転写阻害剤投与後のNIP5;1 の発現量の経時変化をRT-PCRにより調べた。NIP5;1 の5’UTRの断片の下流にGUS遺伝子を連結し、カリフラワーモザイクウィルス35SRNAプロモーター制御下で発現するようにした形質転換植物を作製し実験を行った。その結果、5'UTRを挿入した形質転換植物では、低ホウ素条件に比べて高ホウ素条件でそのNIP5;1 mRNAの分解がより加速された。しかしながら5'UTR内の+182-+200を欠損させると、ホウ素条件によるNIP5;1 mRNAの分解速度に違いがみられなくなった。以上のことから、5'UTRの+182-+200の配列がホウ素栄養に応じたNIP5;1 mRNAの分解に必須であることが示唆された。