日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
会議情報

低温ストレス応答に関わるmRNA分解速度の調節
*千葉 由佳子峯田 克彦平井 優美鈴木 悠也山口 淳二Green Pamela, J内藤 哲
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 0539

詳細
抄録
温帯域や亜寒帯域に生育する植物の多くは,低温馴化と呼ばれる機構を持ち,あるレベルの低温ストレスに晒されると,より強い耐冷性,時には耐凍性をも獲得する。低温馴化には様々な遺伝子発現制御が伴い,主要な転写制御機構はすでに明らかとなっているが,それによってすべての低温ストレス応答性遺伝子の発現が説明できるわけではない。我々は低温ストレスに応答したmRNA分解による遺伝子発現制御を明らかにするために,マイクロアレイと転写阻害剤処理を組み合わせた 「mRNA decay array」によって,低温ストレスを与えたときのmRNA分解速度の変化を網羅的に解析した。研究対象としてシロイヌナズナの培養細胞(T87株)を用いた。一般的に,低温下では酵素活性が低下することが考えられ,多くの遺伝子ではmRNA分解活性が低下し,安定化していた。それら平均的な挙動を示す遺伝子群との比較により,低温ストレスに応答してmRNAがより安定化あるいは不安定化する遺伝子群を見出した。興味深いことに,ストレス応答に関わる遺伝子群は不安定化する傾向があることを明らかにした。さらに,低温ストレスで誘導される定常状態におけるmRNAレベルと転写速度の変化を見積もることによって,mRNA分解による遺伝子発現制御を受けていると考えられる遺伝子をいくつか見出した。
著者関連情報
© 2011 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top