抄録
真核生物は細胞内における個々のmRNA量を厳密に制御することによって、様々な外部刺激に対応している。これまでの研究は転写によるmRNA量の調整に重点が置かれてきたが、近年mRNAの分解による制御に注目が集まっており、mRNA分解に関わる様々な酵素が同定されつつある。mRNA分解の最初の段階はポリA鎖の除去であり、この段階がmRNA分解の律速段階であると考えられている。よってmRNA分解全体の仕組みを理解するには、まずこのポリA鎖の除去を理解することが必要不可欠である。酵母では主要なポリA鎖除去酵素としてCcr4/Caf1複合体が同定されており、変異株を用いた実験からCcr4がその中心的な役割を担っていることが明らかになっている。植物では酵母Ccr4のホモログが6つ存在し、中でもAtCCR4-1およびAtCCR4-2が高いアミノ酸配列の相同性を示した。mRNA分解に関わる多くの酵素は細胞質内でP-bodyと呼ばれる領域に局在することが明らかになっている。T87プロトプラストを用いた一過的発現による局在解析の結果、AtCCR4-1とAtCCR4-2はともにP-bodyに局在することが明らかになった。また変異株を用いた解析では、二重変異株で多面的な表現系が観察された。このことはAtCCR4-1およびAtCCR4-2が普遍的mRNA分解に関与している可能性を示唆している。