抄録
網羅的遺伝子発現情報は遺伝子の機能予測に有効であり、シロイヌナズナでは多くのデータベースが構築され公開されているが、イネにおいてはその情報整備は遅れている。そこで、我々はイネ品種「日本晴」の網羅的遺伝子発現プロファイリングを実施し、データベースRiceXPro (http://ricexpro.dna.affrc.go.jp/) を構築したので本発表で紹介する。つくば圃場で栽培したイネの様々な器官・組織をサンプリングし、イネ4x44KマイクロアレイRAP-DB (アジレント)を用いて遺伝子発現解析を行った。現在、143のマイクロアレイデータから構成される器官・組織網羅的遺伝子発現情報、51のマイクロアレイデータから構成される田植えから刈取りまでの葉の経時的遺伝子発現情報を公開中である。RiceXProでは、遺伝子発現情報を棒グラフ(raw data)と折れ線グラフ(normalized data)の形式で閲覧することができ、さらに簡単な統計解析ツールやヒートマップ作成機能等を実装しているため目的の遺伝子発現情報を迅速に得ることが可能である。これらの機能を利用して得られる情報は、遺伝子の機能予測、遺伝子単離(マップベースクローニング)、有用プロモーターの探索など様々な用途に活用でき、イネ及びイネ科作物の研究に非常に役立つと考えられる。