日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
会議情報

落葉性木本植物における導管液物質に関わる遺伝子の環境要因による発現制御
*古川 純金澤 昌史水野 宏亮阿部 雄太佐藤 忍
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 0555

詳細
抄録
落葉性の木本植物は生長と休眠のサイクルを有し、休眠の誘導や解除には日長や温度、アブシジン酸(ABA)やジベレリンの関与が知られている。Populus nigraの導管液に含まれるKやCa、グルコースやタンパク質の濃度に年周期性が示されたことから、本研究ではドロノキ(Populus maximowiczii)を用いて輸送体や導管液有機物質に関わる遺伝子の発現解析を行った。
既知K輸送体と相同であるPmGORK-like1は地上部において短日処理後期から低温期まで発現が誘導され、根では短日処理開始以降恒常的に発現していた。一方、Ca輸送体の相同遺伝子であるPmACA-like1は地上部、根共に短日処理により誘導され、低温によりさらに強く発現した。またP. nigraで同定された導管液タンパク質の相同遺伝子(PmXSP24, PmXSP25)の発現も短日と低温により誘導されていた。長日環境にある植物へのABA添加や低温処理によりこれらの遺伝子の発現制御機構の解析を行ったところ、それぞれの処理により地上部においてはPmACA-like1が、根においてはPmGORK-like1が顕著に誘導されており、地上部と根では応答が異なることが示された。以上から地上部と根の協調的な環境適応にはABAや低温処理のみでは不十分であり、短日環境によって誘導される全身的な制御機構が関与していると考えられる。
著者関連情報
© 2011 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top