日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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稲の高温障害を抑制する遺伝資源のスクリーニングとその生理機能
*山口 武志黒田 昌治山川 博幹羽方 誠
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p. 0566

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抄録
稲の登熟期の高温により発生する米の品質障害は極めて深刻な問題となっている。そこで植物の様々な環境応答への関与が知られている脂質代謝やシグナル伝達に関わる様々な遺伝子の抑制系統を用いて、高温処理による栽培試験を実施し、高温による品質障害を抑制する系統の選抜を行ない以下の知見を得た。
1、高温試験栽培による大規模スクリーニングの結果、高温処理による品質障害(白未熟粒の形成)が大幅に低減する3つの遺伝子の抑制系統を選抜した。
2、Wild type(WT)とこれら3つの抑制系統の米澱粉の鎖長解析を行なった結果、高温処理のWTの鎖長は平温処理のWTより、DP=9-14の鎖長の減少が顕著であるのに対して、障害が低減する3つの抑制系統では、DP=13-18の鎖長の減少が顕著であった。
3、稲登熟過程の高温処理による発現遺伝子の変化を、DNA microarrayで平温処理のWTと比較解析した結果、3つの抑制系統ではSOD、Catalase等の活性酸素消去系遺伝子の発現が顕著であったことから、これらの遺伝子が障害抑制に機能していることが予想された。
4、品質障害米の生化学的な解析を行なった結果、正常な米に比べてカルシウムの含量が大幅に上昇していることが明らかになり、カルシウムと登熟過程における高温障害との関わりが示唆された。
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© 2011 日本植物生理学会
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