日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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登熟期の高温ストレスがイネ未熟種子のATP含量と種子生産性に及ぼす影響
*佐々木 忠将シャク 高志草野 博彰佐藤 光島田 浩章
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p. 0567

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抄録
登熟期に高温に曝されたイネは、デンプン顆粒が充分に発達せず白濁した種子を生じる。一方、高温登熟に類似した白濁種子を生じるflo2変異体では、デンプン生合成系遺伝子群や貯蔵タンパク質遺伝子など多くの遺伝子の発現が大きく低下すること、ATP含量が低下するなど、高温登熟種子との共通点が多い。そこで、我々はflo2変異体を高温登熟のモデルとして、高温障害と未熟種子に含まれるATP含量との関係を調べた。
出穂期の日本晴、台中65号、金南風について、高温登熟による障害の頻度を比較した。日本晴では70%以上で種子が白濁し、台中65号ではさらにその割合が高くなった。一方、flo2変異体の野生型である金南風は高温登熟による障害をほとんど受けなかった。次に、高温によってATP含量が登熟過程でどのように変化するかを調べた結果、高温障害が現れた日本晴、台中65号ではATP含量の低下が認められた。一方、金南風は充分なATP含量を維持していた。flo2変異体では常温で登熟した場合でも金南風に比べてATP含量が低く、さらに、flo2変異体に高温ストレスを与えると、顕著なATP含量の低下がみられた。これらのことから、flo2原因遺伝子の機能が欠損すると高温による障害の程度が悪化すること、高温障害によって生じる種子の白濁化には、未熟種子に含まれるATP含量の減少が連鎖していることが示唆された。
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© 2011 日本植物生理学会
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