抄録
越冬性植物は低温馴化と呼ばれる機構により耐凍性を獲得し越冬することができる.この低温馴化過程における応答機構を理解するためには,低温誘導性遺伝子やタンパク質の発現制御の解明が重要である.これらの遺伝子やタンパク質は転写や翻訳だけでなく,mRNAの分解や安定化といった転写後調節や翻訳調節によっても制御されていることが示されている.しかしながら,低温ストレス応答におけるmRNA分解や安定化を介した調節機構は不明な点が多い.そこで本研究では植物の低温ストレス応答を解明するため,このようなRNA制御に着目し,耐凍性試験を用いた関与遺伝子の探索を行った.その結果,RNA分解酵素であるXRN4の変異体がWTに比べ高い耐凍性を示した.XRN4は5'-3'エキソリボヌクレアーゼ活性を持ち,poly(A)及びキャップ除去後の主要なmRNA分解に関与することが知られている.さらに詳しい耐凍性試験の結果,xrn4変異体はWTに比べ,低温馴化前では高い耐凍性を示したものの,低温馴化後は同程度,脱馴化後は再び高い耐性を示した.電解質漏出テストにおける評価においても同様の結果が得られた.これらの結果から,RNA分解機構が植物の低温ストレス応答において重要であることが示唆された.XRN4のターゲットを同定するために,トランスクリプトーム及びプロテオーム解析を行っており,その結果についてもあわせて報告する.