抄録
シロイヌナズナの転写因子DREB1/CBFは、DRE/CRT/LTREと呼ばれるシス配列に特異的に結合し、環境ストレスに対する耐性獲得に関わる多くのストレス誘導性遺伝子の発現を制御する。3つのDREB1遺伝子群の発現はストレスのない条件下では低く抑えられており、低温ストレス条件下で一過的に強く誘導される。これら3つの遺伝子のプロモーター領域の配列は相同性が高いことから共通の転写制御機構を持つと考えられた。そこで本研究では、DREB1遺伝子群の転写制御について解析を行なった。
DREB1Cのプロモーター配列をつないだGUSレポーター遺伝子を導入した形質転換植物の解析により、概日リズムと低温ストレスによる発現誘導に関わる配列の両方をそれぞれ含む領域を同定した。酵母のワンハイブリッド法を用いてこの領域に結合するタンパク質としてCG-1型のDNA結合領域を含む転写因子CAMTA2をコードするcDNAを単離した。シロイヌナズナには全部で6種類のCAMTAが存在しており、系統解析および遺伝子発現解析の結果、複数のCAMTAファミリーが協調的に機能すると考えられた。プロトプラストを用いたトランジェント発現系による解析から、CAMTAファミリーはDREB1Cプロモーターを介した転写活性化能を有していることが示された。現在、T-DNA挿入変異植物体を用いてDREB1遺伝子群の発現を解析している。