抄録
遺伝子ターゲッティング(GT)は、標的遺伝子の欠損のみならず、タンパク質モチーフやアミノ酸の改変を可能にする精密度の高い遺伝子組換え技術である。しかし高等植物ではGT頻度は極めて低く、遺伝子導入効率あたりで0.01~0.1%である。近年、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を用いた標的特異的切断によるGTが開発され、GT頻度を1-3% まで上昇させることが報告されたが、GTをより汎用的な技術とする為には、特に遺伝子導入効率が低い植物種に応用する為には、GT頻度を更に上昇させることが必要であると考えられる。
エキソヌクレアーゼ 1(EXO1)は、DNA二重鎖切断(DSB)末端を5’から3’へと削込み、相同組換えの初期反応に必要な3’突出一本鎖DNA(ssDNA)末端を生成させる酵素である。このEXO1過剰発現により、3’突出ssDNA末端生成を効率化すれば、DSBがより相同組換え反応へと進み、GT頻度も更に上昇すると考えた。そこで、ZFNによる標的特異的切断とEXO1過剰発現を組み合わせたイネGT系を開発し、その効率を検証した。その結果、ZFN/EXO1なしのコントロール実験では、1000形質転換カルス塊あたり数個のGT個体が得られるという効率に対して、ZFN/EXO1を過剰発現させると10形質転換カルス塊あたり数個のGT個体が得られ、約100倍の効率上昇に成功した。