抄録
緑藻アオサは高濃度でDMSPを蓄積していることが知られている。そこで塩ストレス条件下における緑藻アオサ(Ulva pertusa)のDMSP生合成の制御機構について検討をおこなった。NaCl濃度が高くなると、アオサの成長速度が著しく低下した。また、顕微鏡観察の結果、不規則な細胞の配列や形態の変化が観察された。細胞内のDMSP蓄積量は培地のNaCl濃度の増加と共に増加した。DMSPはメチオニンから4段階の反応により合成されると考えられている。4-methylthio-2-hydroxybutyrate (MTHB)から 4-dimethylsulfonio-2-hydroxy-butyrate (DMSHB)を合成する反応が律速段階と考えられている。培地の硫黄が欠乏する条件ではO-acetyl serine sulfhydrylaseの活性は増加したが MTHB S-methyltransferaseの活性は減少した。硫黄が欠乏する条件ではDMSPとDMSHBの取り込み活性が増加した。高い塩濃度にするとMTHB S-methyltransferase活性とともにDMSHBの取り込み活性も増加した。DMSHB合成酵素の性質をはじめ、これらの結果について報告する。