抄録
MAPKカスケードはPAMPsの認識から、防御応答反応の発動に至るシグナル伝達において、中心的な役割を担うと考えられている。我々はこれまで、イネにおいてMAPキナーゼOsMPK3/OsMPK6を上流キナーゼであるOsMKK4によって活性化することにより、防御物質(ファイトアレキシンやフェニルプロパノイド類)の蓄積、細胞死の誘導など一連の防御応答反応を誘導することを明らかにしている。OsMKK4-OsMPK6の下流でこれらの防御応答反応を制御する転写因子の解明を目指し、フェニルプロパノイド合成系への関与が予想される転写因子の解析を行った。タバコにおいては、防御応答反応時のフェニルプロパノイド合成酵素遺伝子の発現上昇にNtMYB2が機能すること、NtMYB2の発現がGATA転写因子AGP1により制御されることが知られているが、イネにおいては不明である。そこで、これらの転写因子のイネオルソログについて解析した。NtMYB2のオルソログOsMYB55の発現はOsMKK4-OsMPK6により上昇し、AGP1のオルソログOsGATA3はOsMKK4-OsMPK6によりin vitroにおいてリン酸化されることが明らかになった。これらのことから、OsMKK4-OsMPK6によるOsGATA3のリン酸化を介した翻訳後調節と、OsGATA3-OsMYB55-PALによる転写制御が想定された。