抄録
植物の抵抗性遺伝子産物(以下、抵抗性タンパク質)は、病原体を認識する細胞内レセプターとして働くことが知られている。最近、我々は、低分子量Gタンパク質OsRac1が細胞膜上でいもち病菌に対する抵抗性タンパク質であるPitで活性化されることを見出した。この抵抗性タンパク質によるOsRac1の活性化が耐病性の誘導に重要であると考えられた。現在、抵抗性タンパク質の細胞内局在機構は、十分に理解されていない。そこで、抵抗性タンパク質Pitの細胞内局在に関与する分子を同定する目的で、Pitの局在に変化を及ぼす阻害剤のスクリーニングを行った。野性型Pitは、細胞膜上に局在するが、シャペロンタンパク質Hsp90の阻害剤で処理したイネのプロトプラストではPitが細胞膜上から脱局在をすることを見出した。PitとHsp90の相互作用を検討したところ、in vivoでPitがHsp90と複合体を形成することを見出した。さらに、活性型Pitによる過敏感反応やROSの産生にHsp90が必要であることを明らかにした。以上の結果から、抵抗性タンパク質Pitのシグナル伝達や細胞内局在にHsp90が重要な役割を果たしていることが明らかになった。また、抵抗性タンパク質Pitの細胞膜局在に、脂質修飾のパルミトイル化が重要であることも見出している。