抄録
シロイヌナズナ種子成熟の後期では、ソースから輸送されるショ糖炭素の多くは油脂に転換される。油脂貯蔵制御因子のAP2型転写因子ASML1/WRI1 は、プラスチド内での脂肪酸合成に関わる遺伝子群を直接活性化するが、小胞体でのトリアシルグリセロール(TAG)合成に関わる遺伝子の発現は他の制御因子を必要とする (1) 。TAG合成の制御因子を探索する目的で、TAG合成の最終段階酵素ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼをコードするDGAT1のプロモーター領域とルシフェラーゼ(LUC)コード配列の融合遺伝子をシロイヌナズナに導入した。DGAT1p::LUC 形質転換体のLUC発光は、登熟後期の種子を含む果実の他に、芽生えの葉でも見られ、DGAT1 mRNAの発現と類似していた。このレポーター株のEMS処理種子プールから、多数の個体のLUC発光を連続してモニターできる生物発光リアルタイム測定解析システムを使って、芽生えのLUC発光が低下した変異株をスクリーニングした。得られた低LUC発光変異株の多くは、芽生えのみならず果実のLUC発光の減少と、種子TAG含量の低下を示した。更なるスクリーニングと、次世代高速シーケンサー(SOLiD 4)による変異の原因遺伝子の同定を進めている。 (1) Maeo et al., Plant J. 60: 476 (2009)