抄録
維管束植物において、側根は地上部の支持、土壌中の水分・栄養塩の吸収に大きく寄与している。これまでの研究から、シロイヌナズナの側根形成開始には、オーキシン応答転写因子ARF7/19と、それらの機能を抑制するSLR/IAA14を介した遺伝子発現制御が重要なことが示されている。しかし、側根形成開始におけるSLR/IAA14によるARF7/19の機能抑制の機構はほとんど不明である。そこで、この過程に働く因子を探索するため、側根を全く形成しないsolitary-root(slr)変異体を用いて、その側根形成能を部分的に回復させるサプレッサー変異体suppressor of slr1 (ssl1)を単離した。ssl1は単一劣性変異であり、マップベースクローニングの結果、原因遺伝子がマイクロRNA (miRNA)の生合成と核外輸送に関与するHASTY(HST)であることが判明した。また、ssl1 slr arf7/19四重変異体において側根が形成されないことから、ssl1 slr二重変異体の側根形成能はARF7/19に依存することが示された。さらに、複数のmiRNA生合成関連変異によってもslrヘテロ接合体の側根形成能が部分的に回復することを明らかにした。以上の結果から、側根形成開始におけるSLR/IAA14によるARF7/19の機能抑制機構においてmiRNA制御が関与することが強く示唆された。