抄録
シロイヌナズナ(Col-0)の主根の伸長は鉄が過剰になると抑制され、鉄欠乏条件では促進される。従って、植物は鉄濃度を感知・応答して根の伸長を制御するメカニズムを備えていると考えられる。しかし鉄を含む栄養塩による根の伸長制御には未知の部分が多い。鉄による植物の形態制御機構を明らかにすることを目的に、我々は鉄濃度に対する根の伸長制御が異常になった突然変異体を選抜するための新規実験系を構築し、突然変異体を得たので報告する。予備検討の結果、1/2 MS培地から鉄およびリンを培地から除いた改変培地(選抜培地)上で生育させたシロイヌナズナ幼植物体の主根の伸長速度が10 mm/day程度であるのに対して、この選択培地にさらに鉄を後から添加すると主根の伸長速度が処理後1日目から8 mm/day以下になることを見いだした。これを元に、速中性子線(65 Gy)を照射した約8,000粒のM2種子を上記選抜培地に播種し、生育途中に鉄を添加しても根の伸長速度が低下しない突然変異体の選抜を試みた。その結果、60個体の突然変異体を単離し、そのうち少なくとも4系統で形質が後代へ遺伝することを確認した。既知の鉄関連突然変異体との比較から、今回得た突然変異体は新規の鉄関連変異体である可能性が高い。