日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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エナンチオマー型クロロフィル色素(クロロフィル-c)の光学分割:立体選択性から見たその機能解明
*溝口 正木村 ゆうき民秋 均
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p. 0684

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抄録
クロロフィル-c(Chl-c)は、酸素発生型光合成を行う藻類などに幅広く分布するエナンチオマー型クロロフィル色素である(他のクロロフィル類はジアステレオマー型)。Chl-cは、ポルフィリン骨格を有し、その17位にアクリレート基が結合している。また、その7,8-位の置換基によりChl-c1 (7-methyl-8-ethyl)、Chl-c2 (7-methyl-8-vinyl)、Chl-c3 (7-methoxycarbonyl-8-vinyl)などの類縁体が存在する。このような構造的多様性を持つChl-cは、微細藻類の分類・同定の分子マーカーとしても利用されている。我々は、珪藻由来のChl-c1とChl-c2及び円石藻由来のChl-c3に対して、NMR・CD・キラルHPLCを用いて詳細な立体構造解析を行ってきた。その結果、これら3種類のChl-c子では、エナンチオマー型光学異性構造として、(132R)構造のみを有すことが確認された。この自然界における立体選択性を一般化するために、上記の微細藻類に加えて、他のChl-c含有光合成生物種についても網羅的に解析を行った。その結果、(132S)構造を有す異性体(プライム体)が検出されなかったことから、Chl-c分子は、植物などでよく見られるChl-bと同様に、光合成系における補助集光色素と結論づけられた。
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© 2011 日本植物生理学会
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