抄録
クラミドモナスを嫌気的かつ硫黄欠乏条件下で培養すると、Fe型ヒドロゲナーゼであるHYD1およびHYD2が誘導されて水素を発生するとされている。我々は,このモデル緑藻における種々の代謝変化を転写レベルで包括的に理解することを目指して,次世代シーケンサーを用いて解析を進めている。緑藻クラミドモナスのゲノムは121Mbpと推定されており,その遺伝子アノテーションはJGIのデータベースにまとめられているが,実際の転写産物を正確に反映していない場合がある。そこで我々は,日本で野生株として使われてきたC9株(mating-type minus)を用いてゲノムの包括的発現データベースの構築を進めている。C9株をあらかじめ従属栄養(TAP)培地で培養した細胞を,イオウ源を除いた培地に移して,約24時間培養すると水素発生を始めた。この細胞と、TAP培地で24時間通気培養した細胞から全RNAを抽出し、硫黄欠乏によるヒドロゲナーゼのmRNAレベルの発現の変化を検討した。また水素発生能が誘導される際に,発現誘導される遺伝子群を網羅的に同定するため、次世代シーケンサーGenome Analyzer IIx (Illumina)によるRNA-seqを行い、現在解析中である。