日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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Thermosynechococcus elongatusの光化学系IIにおける反応中心タンパクPsbA1とPsbA3の違いが電子伝達特性に及ぼす影響
*山本 昌一芝本 匡雄加藤 祐樹杉浦 美羽渡辺 正
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p. 0688

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抄録
好熱性シアノバクテリアT. elongatusのゲノムには光化学系II(PSII)反応中心タンパクD1(PsbA1)をコードする遺伝子が3つあり、これらの発現様式は培養条件によることが知られている。通常ではpsbA1が、光ストレスを受けるとpsbA3が発現する。PsbA1もしくはPsbA3で構成されるPSIIの性質を調べると、PsbA3-PSIIの方が酸素発生活性が1.7倍ほど高く、また阻害剤の結合やサブユニット間の相互作用の強さが違うことを見出してきた(杉浦ら、BBA, 2008&2010)。これらの違いは、PsbAを構成する344アミノ酸残基のうちの21個の違いによるとされ、特に活性の差は、一次電子受容体フェオフィチン(Ph)に近接する残基(D1-130)の違いがもたらすPhの電位差によることを電位計測から結論付けた。すなわち、PsbA3-PSIIのPhの電位が17 mVほど高く、一次電子供与体P680の電位が不変ならば、電子供与体・受容体間の自由エネルギー変化がその分大きくなっているといえ、それが活性を高めている要因だとした。しかし、自由エネルギー変化の差を熱発光分析により検討すると、単純にPhの電位変動だけでは説明できないことが分かった。そこで二次電子受容体QAの電位計測を行うとこれにも差異があることを見出した。本発表ではPh・QA間の電子伝達特性と活性の相関を議論する。
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© 2011 日本植物生理学会
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