抄録
緑藻クラミドモナスの光化学系1複合体は14種のサブユニット(PsaA-L,PsaN-O)から構成され,温和な条件下で精製すると9種のアンテナ複合体(Lha1-9)を結合する超分子複合体として得られる。クラミドモナスの光化学系1超分子複合体の一部のサブユニットは,遊離もしくは分解により精製の過程で失われやすい。したがって,完全な構造を保持した標品を得るには,短時間・温和な条件での精製法が必要である。そこで本研究では,光化学系1超分子複合体標品の精製方法を改善したので報告する。まず,野生型クラミドモナスのチラコイド膜をドデシルマルトシドで可溶化し,グリセロール濃度勾配超遠心法にかけ,光化学系1複合体を分画した。従来のショ糖密度勾配超遠心法より光化学系2複合体の混入の少ない標品が得られた。可溶化時のドデシルマルトシドの濃度を最適化すると光化学系2複合体の混入がさらに低下することが分かった。得られた標品には,PsaNとPsaO以外のサブユニットは存在した。これら2種のサブユニットを結合した標品の単離には,異なる界面活性剤を使用する必要がある。得られた標品のサブユニット組成の他に,脂質組成などの分析結果も報告する予定である。