抄録
海洋性珪藻Phaeodactylum tricornutumの葉緑体局在型carbonic anhydrase (PtCA1)の発現は高CO2環境下においてcAMPを介して転写レベルで抑制されている。ptca1プロモーター領域にはCO2/cAMP応答性配列(CCRE1-3)が存在しているが、CO2シグナル伝達機構と転写因子の詳細はわかっていない。そこで、P. tricornutum のゲノムデータベース上に存在する8種類のヒトATF6ホモログをCCRE結合候補因子(PtbZIP1-8)とし、その解析を行なった。まず、PtbZIP1-8をクローニングし、大腸菌での発現を行なった。可溶化したPtbZIPsを分子内に導入したHisタグを使ってNi-セファロースカラムを用いて精製し、ゲルシフトアッセイを行なった。DNAプローブにはCy5標識されている、同一のCCREが5つ並んでいる配列と、CCRE1、2を含むネイティヴなプロモーター配列を用いた。その結果、PtbZIP7ではCCREs特異的な結合が見られたが、PtbZIP1、PtbZIP2においては非特異的と考えられた。続いて、PtbZIP7の局在解析とqPCRによる発現量解析の結果、CO2濃度に関わらず、発現量は一定で核に局在していることが明らかになった。