抄録
核にコードされる新規葉緑体タンパク質の機能を解析するために、Ac/Dsトランスポゾンタグラインより単離された、アルビノ変異体apg11、apg12について解析した。APG11、APG12タンパク質は特別なドメインやモチーフを持たない高等植物に特異的なタンパク質である。お互いのアミノ酸配列は高い相同性を示し、C末端側の約100アミノ酸領域はidentityは51%、similarityは65%であった。APG11、APG12タンパク質はともに葉緑体に局在していた。プラスチドの電子顕微鏡観察の結果、apg11変異体はチラコイド膜が全く形成されず、液胞状のものや、プラストグロビュールが多く観察された。しかしapg12変異体ではプラスチド中に未発達な内膜構造が少し観察された。APG11、APG12遺伝子は、調べた植物体のすべての組織で発現が見られ、発現量に差が見られないことから、すべてのプラスチドで機能することが示唆された。変異体の光合成関連遺伝子の影響を調べた結果、葉緑体コードの遺伝子はmRNAの蓄積が減少していたが、核コードの遺伝子には影響がなかった。また、変異体では葉緑体のrRNAの蓄積が野生型の1/4に減少したが、スプライシング異常は観察されなかった。現在、ツーハイブリッド解析を用いて、APG11、APG12タンパク質と結合するタンパク質を探している。